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第606話

長岡は三条の手からコートを引き抜くと寒くない様に肩にかけてくれた。 「遥登、会えて嬉しかった。 新学期まで元気でいろ。 それから弟達と今の内に沢山遊んどけ。 会えるようになったら土日は俺が1人占めすんだからな」 「はい」 「あと、電話したかったら俺の事気にせずしてこい。 手が離せなかったら無理に出ねぇし、手が空いてから掛け直す」 「はい。 ありがとうございます」 俺がそうしてぇんだと笑う長岡に、 胸がきゅぅっとした。 もっと触れたい。 直接触りたい。 だけど、飴玉の入った紙袋をしっかり握り我が儘を飲み込む。 真夜中とは言え、ここは自宅近くの道路だ。 外での触れ合いはリスキーすぎる。 この関係がバレてしまえば、長岡は教員を続けられなくなってしまう。 そっちの方がずっと嫌だ。 先生だったから長岡と出会えたんだ。 それを奪うなんて自分でさえ許せない。 長岡は目標だ。 「連れ出しといてなんだが、風邪ひくなよ」 「正宗さんも」 「ん、気を付ける。 つぅか、散歩だったな」 「はい」 名残惜しいのが丸分かりの顔を見下ろす長岡は小指を細いそれと絡めほんの少し揺らした。 まるで指切りの様な行動に驚き顔を見ると、優しく目を細められる。 なんて大きな人なんだろう。

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