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第620話

「ただいまー」 「ただいま。 お、綾登、ただい…うお」 新しいゲームを購入しほくほくした顔で帰宅した兄達に、末っ子はなんで自分は留守番だったんだと突進してきた。 「すぐに帰ってきたろ。 怒んなって」 「あーっぶっ!」 頭をぐりぐりと押し付けながら怒る三男を、長男はにこにこした顔で抱き上げるとリビングへと戻る。 そりゃ、風呂の最中に出掛けたのは悪かったなと思う。 でも、最近の綾登は大好きな兄がずっと家にいるのでべったりくっ付き甘えてばかりなので、母親に優登と気分転換に出掛けておいでと背中を押してくれた。 こんな時だし…と渋ったが、優登がならゲームを買いに行こうと誘ってくれたのでそれを了承したのは1時間程前のことだ。 ついでに買い物も頼まれ、お菓子も買ってきた。 綾登のボーロも。 「ごめんって。 母さん、牛乳買ってきたよ。 あと頼まれてた豆腐と納豆」 「ありがとう。 あ、海苔頼むの忘れた」 「あぁ、それなら優登が教えてくれたから買ってきたよ」 三男を受け取りながらそっくりの顔で微笑んだ。 買ってきた荷物を片付ける長男は出掛ける前よりいくらか楽しそうで安心した。 一足早く手洗いうがいを終えた次男は子供の様に急でいる。 「兄ちゃん、早くっ」 「先にしてて良いって。 それより、風呂行ってこい。 麦茶も飲みたいし」 「今すぐ入ってくる! 麦茶は俺が注ぐから早く用意しとけよっ」 三条はいつものふにゃっとした顔で弟に背中を押される。 「じゃあ、麦茶は任せた」 「任せとけって」 無人島を開拓していくゲームは前評判も良く、巣籠もりの影響もあってゲームソフトコーナーは品薄だった。 こんな所にまで影響が出てくるのかと痛感しつつ、本屋で引きこもる準備に本も数冊買ってきた。 これで暫くは出掛けなくても良いと、母親の心配通りの引きこもりを発動させそうだ。

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