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第623話
この1ヶ月弱で何度も通話アプリを利用して顔を見た。
直接会えなくとも会うことが出来る。
本当に今の時代に生まれて良かったと思う。
やっぱり、体温とかにおいとかを感じられないのは少し寂しいがそれ位我慢出来る。
…しないと、いけない。
2人は今日もお互いの顔が見られる様にアプリを繋げたままゲームをしている。
風呂に入って、ある程度まで優登とゲームを進めた三条は同じものを買って帰ってきた長岡とするのをまた楽しみにしていた。
残業続きで疲弊しきっているのに、こうして恋人の時間を大切にしてくれるのは本当に嬉しい。
『遥登の島の果物なんだった?』
「俺の所はさくらんぼです。
行けるようになったら持っていきますね。
正宗さんはなんですか?」
『俺はオレンジ。
つぅか、さくらんぼ、似合ってんな』
「それは、どういう意味ですか…」
『可愛いって事だよ。
他意はねぇよ』
なんて言うが、喉の奥は笑っている。
どうせ童貞な事を揶揄しているんだ。
長岡と付き合っていれば童貞を捨てる事なんてないと知っていて。
でも、それで良いと思えるのは相手が長岡だからだ。
例え魔法使いになっても構わない。
そうなったら、魔法で長岡に沢山の笑顔としあわせを運びたい。
そんな事を思う位、想っている。
「そんな事を言うと釣竿あげませんよ。
虫取り網も」
『釣りしてぇよな。
虫取も早くしてぇ』
「…先に作ってもあげません」
『どうしたら許してくれんだ?』
別に怒っている訳ではない。
それは、長岡だって分かっている。
でも、少しだけ甘えたい。
素直に甘えたいと声に出した方が楽なのに素直になりきれないのは、寂しさが混ざっているからだ。
「……好きって、言って欲しいです」
『遥登、好きだ』
低くて落ち着く声が自分の名前を紡ぐ。
『遥登、愛してる』
「へへ…、へへっ…」
『言わせといて照れてんのかよ。
可愛いな』
「だって……へへ」
だって、嬉しい。
カメラ越しでもきちんと目を見て言ってくれる。
嬉しいに決まってるだろ。
へへ…っと緩む頬を隠くしながら何回も咀嚼して身体に取り込んでいく。
『遥登、好きだ』
「ありがとうございます。
釣竿も虫取り網も沢山作っておきますね」
『それも嬉しいけど、遥登も好きって言ってくんねぇのか』
耳を真っ赤にした三条はゆるゆるの頬のまま口を開いた。
「正宗さん、大好きです」
『うん。
俺も大好きだ』
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