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第624話

ゲームもキリの良いところまで進み、時間も天辺を過ぎた。 いくら明日が休みだと言ってもそろそろ休んだ方が良さそうだ。 「遥登、良い夢みろよ」 『はい。 正宗さんも』 名残惜しそうな顔を笑顔で隠した恋人は、聞き分けが良い。 良い子で手がかからなくて、心配だ。 すっかりぬるくなったマグは片方だけで寂しそうにしている。 それは、自分も同じ。 「遥登、普通に電話する時みてぇにスマホ耳に当ててくれるか?」 『? はい』 これで良いですか?と三条が聴くより早くそれをした。 チュ…ッ 『!!』 カメラが撮しているのを忘れているのか、イヤホンをした耳を慌てて手で抑え羞恥に堪えている。 これだからやめられないんだ。 擦れる事なく真っ直ぐで、可愛くて、格好良くて。 自慢の恋人。 「良い子だからな。 サービス」 『…っ』 ぶんぶんっと尻尾を振って嬉しそうな顔をした三条の方が、三条によく似合っている。 悲しそうな顔で笑うよりずっとだ。 「また明日、通話しても大丈夫か」 何度も頷く頭を撫でたい。 撫でればもっと蕩ける笑顔を見られるのを知っている。 だけど、触れなくても…触れられなくても笑顔にさせられるのも知っている。 なら、今は後者を選ぶ。 その方が前向きだろ。 笑顔に戻った三条に手を振って、また明日と約束をする。 『へへ、また明日です』

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