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第633話
ぽんと頭に触れた大きな手に兄を見上げると、口にミニトマトを詰められた。
「甘くて美味いだろ」
悪戯っぽく笑う兄の笑顔にぐちゃぐちゃした悪意が溶けていく。
あったかくてポカポカして、春みたいだ。
積った雪が溶けて春の小川が山を潤す様にスーっと染み入る。
さらっとこういう事が出来る兄は格好良い。
「肉が良かった」
「まだ焼いてねぇだろ。
最近食欲すげぇな」
「兄ちゃんには敵わないよ」
「5年後は超されてると思うけどな」
悪意を知らない顔で頭を撫でてくれる兄には絶対に手が届かない。
母親によく似た顔で、父親の様に優しい手で守ってくれる兄。
とても高い目標。
だけど目標は高い方が良い。
だって、潜りやすいだろ。
兄ちゃんが教えてくれたんだ。
潜ったって良いだろって。
大丈夫
だって、俺は兄ちゃんの弟だ
名前の通り生きる事だって出来る
優登はいつも顔で、にっと笑った。
「3年後には追い付くから!」
「ははっ、頼もしい」
俺だって大切な家族を守って見せる。
友達もだ。
ホルモンバランスにだって負けねぇから!
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