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第637話
綾登の麦茶とオムツ
おしりふきも買っとこ
あとはゴミ袋と…
夕食を食べ終え、客の減った薬局に買い物へ出掛けた三条は次々と頼まれた物を籠に入れていく。
仕事から帰宅し入浴を済ませた父親より、帰宅後すぐ入浴を済ませれば綾登への感染リスクを少しでも減らせると平日の買い物はこのパターンが多くなった。
大袈裟だと言われても、それで小さな弟と思春期真っ只中の弟を守れるなら何を言われても気にしない。
週が変わっても、いや、変わってからの方が状況は悪くなっていた。
悪意の滲むニュースやネット記事に疲れが溜まる一方だ。
買い物はちょっとした気分転換にもなっている。
あ、正宗さんが使ってる柔軟剤
開けっぱなしの窓から、ベランダに干した洗濯物のにおいがふわりと入る部屋で一緒に過ごした日々が一気に蘇る。
心地の良い部屋で各々本を読んだり、 特別な事はなかった。
だけど、とても特別な日々。
こっちはファブリックミストだ
これも、ベッドとかカーテンに使ってたやつ
じっとそれを見詰め、スマホケースにICカードがある事を思い出す。
買っちゃ、 おうかな
部屋で使っている消臭剤も半分程残っているが、気分も変わるし良いだろう。
カーテンなんて頻繁に洗う物でもないし。
龍に入れたそれをもう一度見やる。
やっぱ気持ち悪くないか…?
でも、においだけでも正宗さんの事感じたい…
って、女の子かよ…
だけど、女々しいと思っても買ってしまうんだ。
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