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第645話
まずは長岡の声が漏れてしまわない様にイヤホンをセットし、リュックの中に隠していた紙袋から玩具を取り出した。
手が小さく震えているのは、自宅でこれからいやしい事をする緊張と少しの期待。
『使ったか?』
「…………使っては、ない、です」
『まさか、ヌいてねぇのか?」
半分当たりだ。
ヌいてない、と言うよりヌいても気持ち良さが足りないと言うか。
最初の頃は処理していたが今はほぼしていない。
それに長岡とのセックスでアナルでの快感を覚えた身体はそこで快感が得たいと我が儘になり、いつの間にか陰茎を扱いて射精するだけでは満足出来なくなっていた。
『マジかよ。
身体辛くねぇか』
これには口篭ってしまう。
射精し溜まった精液を吐き出すだけならしているので身体自体は辛くない。
堪えるのは、それを1人でしないといけない精神的な事だ。
それも実家で。
入浴は家族内で1番最後なのでシャワーで音を紛らわせながら処理しているが、不意の勃起は困る。
夢精だってそうだ。
いくら自分でも洗うとは言え、家族に洗っている所は見られたくない。
不要不急の外出が自粛され、家に1人きりのタイミングはなくなった。
自室の外を気にかけながら処理をするのはどうしても気持ち良さは二の次になってしまう。
それこそ、虚しさを感じてしまう。
『大丈夫か?』
こくんと頷くも、下っ腹がじくじくする。
長岡の大きいモノの先が無遠慮に突く場所がもどかしい。
これが欲求不満なのだろうか。
元々そんなに性欲がある方だとは思っていなかったが、長岡と付き合ってからセックスの甘さを知り増したのか物足りなさがジワジワと襲ってくる。
画面をちらりと見るその目が物欲しそうにしている事に本人は気が付いていない。
『んな顔して。
ほんと、たまんねぇな』
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