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第666話
ファブリックミストのにおいに包まれコートを抱き締めたまま眠りについた三条は、丸くなりとても気持ち良さそうに眠っている。
自慰で心身ともにすっきりしたのも要因の1つだが、大半は恋人とのやりとりのお陰だ。
地域猫がボンネットで昼寝をしている写真を貰いながらその話をしたり、長岡との通話中ずっと笑っていた。
両親共に兄としてではなく1人の息子として接してくれる。
だけど、長岡はまた別だ。
息子でも兄弟でもなく、教師と教え子でもなく、1人の人間として─三条遥登という存在として─ありのままでいられる。
背伸びの必要ない。
子供っぽい所を見せても長岡は受け入れてくれた。
それが、傷付く事も多い豊かな感受性をすっぽりと包み込んでくれる。
大きな身体を包み込んでくれる程、大きな恋人の大きな優しさ。
それがふとんと共に三条をくるむ。
ふへっとゆるゆるの頬が一層だらしなくなるとコートに額を擦り付け、夢の中。
長岡のにおいがしなくなってきたのは寂しいが、長岡の私物が手元にある嬉しさは寂しさに勝てない。
それに、長岡にコートを手渡して返すと新たな約束が出来た。
その日が何時になるかなんて分かりはしないが、それでも嬉しい。
その日がずっとずっと、ずっと楽しみになった。
早くその日が来ます様に。
だけど、もう少しだけ借りていたい。
明日は、次男がチーズケーキを焼いてくれる。
起きるのもまた楽しみだ。
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