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第667話
チーズケーキが焼き上がり、ケーキクーラーにのせると良いにおいが台所いっぱいに広がった。
甘くてしあわせなにおい。
甘い物は脳の栄養だけでなく心も元気にしてくれる。
早く兄に食べて欲しい。
そん事を考えている中、兄はうとうとしはじめた。
綾登を足の間にのせ、そのあたたかさに睡魔が襲ってきたのだろうか。
それとも夜中まで本を読んでいたか。
「うーぅ」
「んー、どうした」
「うーなー」
「うん。
うーなー」
綾登は眠そうな兄に興味があるのか襟刳りを支えに立ち上がった。
くっきり浮き出た鎖骨が丸見えだ。
あんなに引っ張ったら襟刳りが伸びてダルダルになるが兄は怒らない。
台所から戻り、ぷくぷくの頬を潰しながら声をかける。
「綾登、服引っ張ると伸びるんだよ。
兄ちゃんが余計ガリガリに見えちゃうだろ」
「ぶー」
「兄ちゃんも眠いなら横になって寝ろよ。
チーズケーキまだ熱いから、冷めたら起こすし」
「ん…、んー、なら少しだけ」
綾登ごと寝転ぶと兄は顔にブランケットを被って寝はじめた。
珍し
疲れてんのかな
兄は愚痴の1つも溢さず毎日自宅で過ごしている。
綾登と遊んだり、買い物に行ったり、お世辞にも大学生しくはない。
だが、兄らしい。
真面目で家族思いで優しい自慢の兄だ。
優し過ぎて不安になる事も沢山あるが、それ含め兄の良い所だと思う。
「なーうー」
「綾登、しー。
兄ちゃん寝るって」
「ん」
言っている事が分かったのか大人しくなった。
頭を撫でると、小さな手が兄の顔がある辺りを撫でる。
「起きたら、おやつ食おうな」
「な!」
大きな声に、兄から渋い声が聞こえてきたがさはーと口の前で指を立てると綾登は静かにした。
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