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第669話

食べごたえのあるようにベイクドチーズケーキにしたが寝起きにはクドいだろうか…なんて心配はすぐに吹き飛んだ。 「うま」 「んーまー」 そっくりの顔でおやつを食べる兄弟に次男は胸を撫で下ろした。 そんな心配いらない事くらい頭では解っている。 でも、心配してしまうのは兄が人に敏感で優しい人だから。 兄の膝の上で、ふんふんっと喜んで食べているのは人参とヨーグルトの蒸しパン。 これは母親が小さな頃に作ってくれた物だ。 蒸しパンと言ってもレンジで簡単に出来る事もありよく作ってくれていた。 台所の隅に置かれた母親の箇条書きが書かれているノートを見ているから味も同じ。 今食べるとあんまり甘くないけど、端っこに書かれたメモに─遥登は何でも美味しそうに食べてくれる、優登はバナナが特に好きみたい─愛情を見付けた。 小さな頃の自分は、バナナの蒸しパンが好きだったんだとはじめて知った。 溢れる愛情は自分の知らない所にも転がっているらしい。 そんな愛情を見付けるたびに反抗期なんてやめたいなと思うが、こればかりは自分でどうこう出来る物でもない。 ホルモンバランスなんてめんどくせぇな。 全部のページに兄弟の食の好みやメモが書かれていて、新たに綾登の分も加わってきた。 まだこれから食べられるようになるレシピも沢山ある。 大人と同じ食事も。 楽しみがいっぱいだ。 「綾登、美味しいな」 「ん!」 「良かった。 よく噛んで食べてな」 もぐもぐと頬袋を動かす兄弟を見ながら同じ物を食べる。 寝起きにチーズケーキをこんな顔で食べられるなんて、やっぱり兄は食べる事が好きなんだな。 そして、美味そうに食べてくれるのが嬉しい。

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