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第674話
プリントを製作しては印刷、それを繰り返し庶務を済ませ、埃の目立つところの清掃、またプリント製作。
授業再開の目処がたたず、その間にせめてもの課題製作に明け暮れている。
不要不急の外出は控えろだのお願いばかりを言いいつつ若者を責める言葉を吐く年配者に頭が痛くなってきたのは長岡だけではない筈。
確かに生徒の健康が1番だけどな
生きてるから文句も言えんだし
「長岡先生、終わりそうですか?」
「あ、すみません。
もう少しかかります」
「あぁ、いえ。
催促ではなく、俺もあまり進まなくて…。
少し休憩しないかってお誘いです」
隣席の同輩─柏崎─は、準備室に他に職員がいない少しの間だけでも休憩しないかとチョコレートを差し出してきた。
悪戯気に笑い共犯に誘う。
「疲れた時は甘い物ですよ。
と言うか、この部屋暖房入ってて溶けそうなのでよかったら食べるの手伝ってください」
こうして気さくに声をかけてくれるのが有り難い。
歳が近い事もありよく話すが、性格も案外さっぱりしていて若者の感覚に近い。
生徒達にとっては友達感覚で接する事の出来る教員だろう。
「ありがとうございます」
「いえ。
今更ですけど甘いの大丈夫ですか」
「えぇ。
頂けて嬉しいです。
いただきます」
包装を上手く使い直接手が触れない様に半分程取り出すとマスクを僅かにずらして口に入れた。
甘くてとろりと形を変えていくチョコレート。
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