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第689話

綾登の誕生日が終わると、ゴールデンウィークに突入した。 とは言うものの、不要不急の外出は控えろと通達が出ているので何処かに出掛ける事もしない。 三条は、ひたすら島開拓に精を出していた。 「兄ちゃん、このレシピ持ってる?」 「ん? あ、持ってない。 欲しい」 「じゃあ、後で持ってく。 あと要るのある?」 「今のところは大丈夫。 ありがとな」 電源の点いていない炬燵に脚を入れながら、すっかり冷たくなったお茶を啜る。 正宗さんは、なにしてるかな 天気の良い午後だ。 本を読みながら昼寝だろうか。 それとも、漸く起きた頃だろうか。 同居の家族以外とは会うべきではない。 そんな事、分かっている。 理解している。 だけど、1人は寂しい。 いくら顔を見ながら通話が出来たって、体温が恋しくなる。 それを、世間は我が儘と言うのだろうか。 お互い無症状の可能性があるだけに、それを飲み込まなくてはいけないのは解っているが三条だって会いたくて、恋しくて、たまらない。 『遥登、飯食おうか』 優しく頬笑む綺麗な恋人。 当たり前になって嬉しかった日常。 確かにあった贅沢な日々。 傍らのスマホは無言を貫き通す。

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