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第690話
のそりと半身を起こし、そのままスマホを手繰り寄せる。
何時だ…
もう昼か
寝過ぎた
邪魔な前髪を後ろに払いながらもう一度ふとんに沈み込む。
日々、目まぐるしく変化していき漸く纏まった休日を向かえたというのに、平日の疲れをとる為だけに休日が消えていく。
寝室のカーテンを開けたのはいつが最後だっただろうか。
確実なのは三条が隣にいた時だ。
遥登なにしてっかな
弟と遊んでるか、本読んでるか、勉強してるかの3卓だな
自粛中じゃなくとも、大体の行動は予想出来る。
この部屋でもそうだったからだ。
三条のにおいのなくなった部屋はやけに広くて寝室から出るのもめんどくさい。
元々本にしか興味のないのも大きな要因だ。
それを人間らしくしてくれたのは年下の恋人で、訪れる事もなくなれば元に戻るのも早い。
ふとんと離れがたいのは皆そうだろう。
傍らのパーカーを引っ張り顔を埋めてもにおいは殆んどしない。
遥登が足んねぇ…
あの腕にすっぽり収まるほっそい身体もあったけぇ体温も他にねぇんだよな
三条が気に入っていたふわふわの毛布を抱き覚めてみるが全く違う。
こればかりは代わりは効かない。
だからこそ大切で愛おしくて、恋しいんだ。
後で連絡して顔見てぇな
だが、日中は弟達に譲らないと大人気ないからな。
いっそもう一眠りしようと目を閉じた。
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