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第691話

三条が入浴を済ませたであろう時刻を見計らいメッセージを飛ばした。 直ぐ様返ってきた了承の言葉に、今度は電話を繋げる。 「こんばんは」 『こんばんは』 三条の声だ。 それだけで過ぎる程嬉しい。 「いきなり悪いな。 声聴きたくて」 『あの…俺も、声聴きたかったです』 にかむ様に言う恋人にたまらない気持ちになる。 ほんと可愛いよな 声聴きてぇで照れるかよ いや、照れるんだよな 初々しい恋人が、ふわふわと擽ったい。 「ちゃんと肩まで浸かってあったまったか」 『はい。 今日、少し冷えますよね。 正宗さんもちゃんとあったまってくださいね。 風邪ひいたら心配です』 「分かった。 こんな時だから尚更気を付けねぇとだよな」 ソファに深く座り直し、恋人の声を全身に行き渡らせる。 冷たい足の指まで包まれ日中のストレスが癒えていく。 やっぱり恋人は偉大だ。 どんな栄養剤より元気になるし、どんなふとんよりあたたかくしてくれる。 触れたいのに触れる事の出来ないもどかしさを噛み砕き、三条と使える時間は目一杯三条に使いたい。 触れたい、寂しい、会いたい。 そう思うのは当たり前だ。 だけど同時に、三条の大切な幼い弟達をご両親を自分も守りたいと思う。 それもまた当たり前の感情だった。 三条の世界を自分も守る事が出来れば嬉しい。 笑っていてくれるのであれば尚更に。 随分と丸くなった思考だ。 友人に牙を抜かれ猫になったのかと揶揄されたが、あながち間違いでもないだろうな。 『それから、髪もしっかり乾かしてくださいね』 「大丈夫だって」 『自分の事は無頓着じゃないですか。 しっかりですよ』 「分かったよ。 しっかり乾かす」

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