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第694話
くぁ…と大きく口を開けそうになり急いで閉じた。
見れている訳ではないが、でもやっぱり欠伸を見られるのは恥ずかしいし頭のどこかに長岡先生がチラ付いてしまう。
それに、眠いと思われ電話を切られてしまうのも寂しい。
折角電話しているのだから少し聴いていたい。
だが、噛み殺したつもりが早々に長岡にバレてしまった。
『眠いか?』
なんで分かったんだろ…
気配で分かるのか?
先生って頭の後ろにも目があるんじゃねぇっかって思う時あるけど、その類い…?
「眠くありません。
脳が、酸素が足りないって言ってるだけです…」
『んだそれ。
ちゃんと息すんだぞ』
笑いを含んだ声にはにかみ頷いた。
本当は少し眠い気がする。
安心する。
落ち着く。
長岡の声も、喋っている事も、存在も。
とろんと微睡みに誘うのは睡魔ではなく長岡なら、抗えない。
だって大好きな人だ。
誰だって抗えないだろ。
『眠かったら寝ろよ。
どうせゴールデンウィークで休みなんだし出掛けられねぇし、俺も食材買い込んできたから暇なら電話してような』
「ほんと…ですか」
『あぁ。
先生は嘘なんか言いませんよ』
そう言えば、長岡は殆んど嘘を吐かない。
真顔で冗談は言うが人が嘘を吐かれた記憶はほぼない。
何かあっただろうか。
恋人の存在だって濁すだけだ。
考えつつ長岡に甘えたい三条は、はいっと答えた。
「でも…もう少しだけ…」
『ん、話してような』
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