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第695話

父が朝から物置を漁っていた。 足元の段ボール箱には、母の文字で優登と書いてある。 それから三輪車。 長男から次男へ、そして三男へ下がっていくのか。 新しいのが良いとも思わないが、さすがに20年前の物は…と思わなくもない。 でも、思い出の沢山詰まったそれを大切に残していてくれたのは嬉しい。 部屋から出る事なく窓から顔を出し声をかけた。 「なにしてんの?」 「んー、テントがな…あったと思うんだけど……あった」 「テント?」 「部屋に張ったら優登も綾登も少しは気分変わるかなって思ってな。 庭でも良いんだが、ハイハイが早い綾登から目が離せないだろ。 だから室内にな」 パンパンっと埃を払い父は漸く見付けたと笑ってみせた。 テントと言えば、庭に張ってバーベキューやプールの時に遊んでいた。 日焼けすると真っ赤になってしまう妻と息子を心配した父親の愛情は大きくなるにつれ、必要なくなり今や物置の中。 優登も中学生なったのだからもう丸々2年は見ていない。 久し振りに日の光を浴びて嬉しそうだ。 「頭にゴミ付いてる」 「美月ちゃんに持ってもらおー」 頭にゴミを付けた父は足元の荷物を戻していく。 昼飯は父が作るらしい。 父の作る焼きそばはキャベツともやし沢山で美味しいから好きだ。 これから朝ご飯を食べるのに、もう昼が待ち遠しい。

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