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第698話

ホットプレートいっぱいに作られる焼きそば。 ソースの焼ける美味そうなにおいに三条はきゅっと上がった口角を更に上げている。 「おかわりも作るから沢山食べてくれよ」 食べ盛り2人があっという間に食べきってしまっても大丈夫な様に、まだ冷蔵庫の中にはおかわり分の食材がある。 収入の心配はするな。 学校に行けない事も気にするな。 我慢ばかりの息子達にせめて腹一杯食べて欲しい。 父親の気持ちは思春期の次男にもきちんと届いている。 その証拠に箸が止まっていない。 「綾登、父さんとご飯食べようか。 美月ちゃんはご飯食べるって」 「良いよ。 ベッド動かして疲れたでしょ。 焼きそばも作ってくれたし食べて」 「美月ちゃんはいつも俺にそうしてくれるだろ。 たまにしか出来ないし、俺も綾登とご飯食べたいし。 ね?」 三条はおかわりの焼きそばに紅生姜をどっさりとのせ、そのやり取りを見ている。 相も変わらず付き合いたての恋人みたいだ。 優しいのに越した事はないが、早く手をつけないと兄弟に食べられてしまうぞ。 残しとくけど量は保証出来ない。 眉を下げる母親に紅生姜を差し出すと漸く頷いた。 「じゃあ、お言葉に甘えて。 ありがとう。 いただきます」 「うん。 あったかい内に食べて」 いつも母が言う言葉を父が口にした。 その言葉に、長岡に会いたいなと思ってしまう。 長岡もそう言ってくれる。 そして、火傷しない様になと付け加え、とても穏やかな表情で此方を見てくる。 後で連絡しよ 顔も見たいな すごく恋しい。

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