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第699話

『今、通話して大丈夫か?』 メッセージを作っていると長岡からそう言葉が送られてきた。 弟はゲームをしているようだし、 両親は末っ子を寝かし付けている。 大丈夫ですと返すと、すぐにスマホが震えた。 ビデオ通話だっ 正宗さんの顔が見られる! 緩む頬に力を入れてスマホ画面をタップする。 すぐに写し出される綺麗な恋人。 会いたかった長岡だ。 折角力を入れたのにすぐにふにゃぁといつもの顔に戻ってしまった。 だらしのない顔が画面の隅に小さく写っている。 『こんばんは。 突然悪いな』 「こんばんは。 俺も、電話して良いか連絡しようと思ってました」 「マジか。 嬉しいな」 今年度にはいってから何度こうして通話をしたか。 平日は長岡の仕事を気にしてあまりしないようにしているがやっぱり嬉しい。 いつもだったら─すっかり“いつも”になった日常が擽ったい─外泊日なのだが、 世情はそれを許さない。 長岡も家族を守らせてくれと言ってくれた。 今回の事にはその言葉に甘え会わない 日々を送っている。 だけど、本当はすごく会いたい。 直接会って沢山の話がしたい。 隣で本を読みたい。 抱き締めたい。 抱き締められたい。 一緒に寝たい。 一緒に食事がしたい。 我が儘を全部飲み込んで2ヶ月が経とうとしていた。 きっと長岡はそれに気が付いている筈だ。 だから、時間が許す時はこうして顔をながら話す。 今流行りのリモートで。 大好きな長岡の顔が見られるんだからリモートだってなんだって良い。

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