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第700話

その後も再開された勉強教えて貰ったり、食事を済ませたり風呂に入ったり空間を繋げたまま各々好きな事をして過ごしていた。 折角通話しているのに勿体ないと思う人もいるだろうが、これが良い。 元々一緒にしてもそういう時間の使い方をしてきた。 だから、これが良いんだ。 そうやって過ごす日々が好き。 「正宗さん」 『うん?』 「んーん、呼んだだけです」 『もっと呼んで良いぞ。 遥登に名前呼ばれんの嬉しいし』 「正宗さん」 名前を呼ぶと低くて落ち着く声が呼び返してくれる。 馬鹿な恋人同士みたいだが、それ程に恋人が恋しい。 外に出る機会も減りめっきり弱ってしまったようで、なんだか甘えたい気分だ。 1番子の悲しい性とでも言うのか、どうも甘えるのが上手くない。 優登や綾登は上手に甘えてくる。 あんな風に甘えられればと思わなくもないがこればかりは難しい。 それに、長岡だって連日の仕事に疲れている筈だ。 甘えて欲しい。 『ほんと、たまんねぇな』 「…子供みたいですよね」 『そうか? それでも良いだろ。 俺は好きだ』 「正宗さんは、いつも甘やかしてばっかりですよ」 『恋人の特権だ。 もっと甘やかしてぇな』 優しい恋人はいつもそうやって甘やかしてくれる。 それに、意を決した。 「正宗さん、好き、です」 突然の告白にきょとんとしたが、すぐにふわりと花を咲かせた。 とても美しい花。 とびきりの花だ。 『俺も、遥登の事すげぇ好き』 泣きたいような気持ちは、もっと大きな愛情で知らん顔をしたい。 悲しい気持ちがそこにいたって良い。 ただ、長岡の前では楽しい事を沢山話したい。 だって、泣いてたら格好良い顔が見られないだろ。 こんな綺麗な顔をずっと見ていたい。 そっちの方がずっと良い。 俺は、そう思う。

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