704 / 1502

第704話

パタンと本を閉じ伸びをするとパキパキと節の彼方此方から空気の潰れる音がした。 集中して読んだせいか肩や腕に変に力が入ってしまっている。 肩甲骨を動かしつつ胸を大きく広げ息を吐いた。 『すげぇ鳴ったな』 「同じ体勢でいたからバキバキ鳴っちゃいます…」 『最近、運動出来てねぇからな』 「大学に入学してからすっかりです」 『ん、そうだな』 僅かに笑いを含んだ声に疑問符が浮かぶ。 何かおかしい事でも言っただろうか。 「あの、何かおかしな事でも言いましたか…?」 『いや。 なんも。 悪い、此方の問題だ。 気にしないでくれ』 電車で立ちっぱなしと言っても、大学では座りっぱなし。 バイトで細々と動くがそれだって体育の様な運動とも違う。 長岡は学校をあちこち歩いているだけなのに、筋肉が付きやすくて羨ましい。 割れた腹にしっかりとした腕。 細いのに男を感じる身体。 綺麗な身体なのに、喉と腹筋が毒々しくてえっち…… あ、まさか、運動って… いや、でも……俺の勘違いかもだし ……言ったらそういう事ばっかり考えてるって思われるかもだし… 『どうした? 面白い顔してんぞ』 「あ、いえ…」 ドキドキする心身を落ち着かせる様にすっかり冷めてしまったお茶を飲んだ。 『ふぅん?』 すると、長岡はふと動きを止め背筋を伸ばした。 ん…? どうしたんだろ

ともだちにシェアしよう!