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第711話

「すごいな。 昨日1日でこれ全部作ったのか? まだ中学生だろ」 『はい。 夜も結構遅くまでしてくれて。 すごく嬉しくて、全部食べちゃいました。 あ、ゼリーはまだ容器に沢山あったので明日も食べます』 全部ってマジか 食うか 食うよな 遥登だしな ケーキの写真を見せてくれた三条は弟を褒められた事が嬉しいのかにこやかにしている。 弟の器用さも凄いが、これを全部食べ切った三条も凄い。 本当によく食べる子だ。 宣言が出ていなかったら顔位見たかったのが正直な思いだが、三条や三条の大切な家族、生徒達を守る為だ。 悔しい気持ちをぐっと奥歯で噛み潰すから、どうか少しでも早くマシな世の中になってくれ。 三条の弟を含め生徒達には修学旅行だって楽しんで欲しい。 まだ幼い子供達は健やかに育ち、友達をたくさんつくって欲しい。 ずっと隣で笑っていて欲しい。 その為の少しの間の我慢なら耐えるから。 マグを満たすコーヒーを一口、二口、流し込みながらなんて事のない顔を取り繕う。 『それと、島民からも祝って貰いました。 こんな時だから余計に嬉しいです』 「俺に祝われるよりか?」 『正宗さんは特別ですよ。 別格です』 20歳になっても変わらない笑顔。 また1年ふわふわと穏やかに笑って健康に過ごして欲しい。 そして、20代の三条も隣で見ていたい。 成長も苦悩も、喜びもすべて。

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