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第712話
ゲームのキャラクターに嫉妬したって意味はないのは分かっている。
それに、三条は分かりやすいから心配なんてしてもいない。
好きです、大好きですって顔で見てくるんだぞ。
愛されてるなってきちんと伝わってる。
だけど、ころころと表情の変わる恋人を構うのは面白いからそれは止められない。
「人誑しめ」
『誑しじゃないですって…。
それは正宗さんの方じゃないですか。
女の子達を虜にしてるの知ってるんですよ』
「虜って…。
それはねぇよ」
もう30出前。
生徒達から見たらおっさんだろう。
三条は20歳になり大人の仲間入りをした訳だが、誕生日を迎えたからといって急に大人になれるものでもない。
長岡だって酒や煙草を嗜んでいたが、いまだ野球でわくわくしたり悪戯心で三条を驚かせたりと子供心がある。
つい先日までA組と同じ様に楽しんでいたせいだろうか。
大人になった実感が薄い。
にこにこと此方を見てくる恋人に、ふと子供心がもっと可愛い顔をさせてやろうと囁いた。
「俺は、遥登以外に興味ねぇよ」
「っ!!」
くりくりした目が大きく自分を映すと、すぐに顔が赤くなった。
画面越しでも赤くなるのは分かるのか。
いや、“遥登ならそうなる”と知っているから、そう見えるだけだろうか。
どちらにせよ可愛らしい。
思い通りの顔が見られてご満悦の長岡は楽しそうに笑った。
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