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第713話
遥登にとって、今年の誕生日がどんな誕生日なのか想像する事しか出来ない。
会いたかったと自惚れても良いか。
それとも、久し振りに家族と共に出来て嬉しかったか。
どちらであっても、はたまたどちらもであっても、三条にとって今日の日がしあわせに満ちた日であったのならなによりだ。
なにりよりもそれを願っている。
『正宗さん、今日は沢山顔を見せてくれてありがとうございます』
「俺がそうしたかっただけだ」
『そうだとしても、嬉しいです』
はにかみ、そう言う三条を本当は今すぐにでも抱き締めたい。
おめでとうとキスをして20歳になった身体を抱きたかった。
一緒に飯を食べて、腕の中で眠るその顔を見たかった。
一体いつまでこうしていれば良いのか誰にも分からない事を考えてしまう。
だって、もう1か月以上直接会えていないんだ。
恋しく思って当たり前だろ。
だけど、大切だから今は会わないんだ。
「今日の遥登は素直だな」
『そうですか…?』
「それに、いつも可愛いけど今日は一段と可愛い。
すっげぇ可愛い」
三条はさっと目を逸らし、口元をそれとなく手で隠した。
そんな事をしなくとも照れていると丸分かりだ。
目は口ほどに物を言い、清潔な髪の隙間から見える耳は真っ赤。
ニヤ付きそうな口元を堪えて言葉を続ける。
「20歳になった遥登もすげぇ好き」
『……え、と』
「変わらず愛してる」
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