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第715話

日付は当に連休最終日になっていた。 今年は休日と祝日が重なったのでいつもより長い。 それなら長岡の部屋に外泊出来れば良かったのに。 そうしたら長く隣に居られたのに。 口に出せない我が儘を頭の端に追いやりながら部屋の電気を消した。 丸くなってふとんに潜り込むと良いにおいが身体を包んでくれる。 昼間振り掛けておいたファブリックミストのにおいだ。 長岡のにおい。 やわらかなふとんの重みとにおい、それから心をあたためてくれる愛情に包まれればすぐに眠りに落ちていける。 だけど、眠ってしまうのが勿体ない。 こんなにしあわせで、そのしあわせに包まれて気持ちが良いのに寝てしまったらそれすら分からなくなってしまう。 もっとこのしあわせを噛み締めていたい。 そう思うのに、目蓋は重くなっていく。 呼吸が深くゆっくりになっていく。 正宗さん 鼻まで器用にふとんに埋まれば、もう頭の中は長岡の事しか考えられなくなってしまった。 優しい人だ。 だけど、少し意地が悪くてサディスト。 それでも─いや、それを含めて─世界で1番愛おしい恋人。 今日はずっと通話をしてくれていた。 連休と言ってもする事が沢山あるだろうに。 いつも貰っている溢れる程沢山の愛情と優しさを返せる男になる。 これが20歳の抱負だ。 すっかりにおいの消えてしまったコートだが、この部屋で唯一の長岡の私物を抱き締め夢の中へとおちていく。

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