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第719話
「次は、種まきな。
じゃん。
ほうれん草」
「ぶー…」
「うどんに乗っけると美味しい、青葱!」
「うーん!」
言葉を理解しはじめてから、こうして優登は綾登を構っている。
末っ子はほうれん草が苦手なのかあまり好んで食べようとはしない。
大好きなうどんにのせると、いつもより少し悄気ているのが面白いく、つい入れたくなるが無理強いをして嫌いになってしまうのは勿体ないので構い過ぎないようにしている。
あぁ、でも悄気た顔も可愛いんだ。
種の入った袋を並べていくと三男は1つひとつに悄気たり喜んだり忙しそうにしている。
「ほうれん草が育ったら、蒸しパン作って貰おうか。
優登の作った蒸しパン好きだろ」
それは美味しいやつ!と綾登の目がキラキラした。
美味しい物は知っている。
母の作ってくれるご飯、次男の作るお菓子、家族で食べる食事もみんな美味しい。
余程楽しみなのか土で汚れた手で兄のシャツを握り締めて引っ張っている。
弟のその気持ちはよく分かる。
ほうれん草とかきたまのうどんを思い出して三条はふわふわと笑った。
美味しい記憶と繋がるとこんなにあたたかな気持ちになるのを、1歳になったばかりの弟はもう知っているんだ。
そのとても大切な気持ちをこれからも大切にして欲しい。
「楽しみだな」
「んーんー」
「分かったよ。
終わったらおやつ食おうな」
「きゃぁぁ」
種を植えた植木鉢は、ハーブの鉢の隣に並べられた。
これから緑が増えるのが楽しみだ。
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