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第721話

ゴールデンウィークが終わっても、祝日とと何が違うのか分からない毎日を過ごす。 学校も休み、出掛けるなともなればそれもそうだろう。 三条には今、休日も平日もない。 でも1つだけ違うのは長岡の仕事が休みな事だ。 窓辺に座ると背後から射す日の光に茶けた髪がキラキラと輝いた。 夕日みたいな綺麗な色をさせて笑う恋人はとても格好良い。 胸がいっぱいになるその姿に三条も口元を緩めている。 『変なとこあったら言ってな』 「任せてください」 久し振りに─三条が推薦準備で頭髪の整え方を教えて貰う時に見たぶりの─鏡を、カメラの隣に置くとさっさっと手櫛で髪を真っ直ぐにした。 確かに見慣れた恋人より伸びていて新鮮だ。 普段はセットをしているので襟足を切り揃える事でなんとか誤魔化してきたがそれもそろそろ苦しいらしい。 自粛中に美容師達がネットにあげてくれたヘアカットの動画を見て勉強した長岡は自分で切ると言うので見たいと申し出た。 二つ返事の了承に喜んだのは昨日。 教師からの感染を防ぎたいと極力外出はしていないらしい。 元々部屋にいる事の多い恋人だが買溜めと冷凍食品を使い買い物も殆んどせず、家と学校の往復をしているのだろう。 長岡は生徒を大切に思ってくれているのを、三条は身をもって知っている。 それは自分が恋人だからというのを差し引いてもだ。 自分はその邪魔をしたくない。 出来ない。 だから、今、自分に出来る事をするまでだ。 明らかに文房具の鋏を構えた長岡はヂョキっとサイドの髪を切り落とした。 『多少なら失敗してもセットすりゃ分かんねぇし大丈夫だろ』 「正宗さん、短くても似合いますから失敗しても大丈夫ですよ」 『遥登に格好良いって言って貰える様に頑張るな』

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