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第722話

鏡を見ては少しずつ切ってを繰り返す。 文房具の鋏でも十分切れていく。 特に自分では見えない後頭部を切るのが大変だったが、その度に三条が“良い感じですよ”とか“もう少し切った方が揃います”とかサポートしてくれるので大分さっぱりしたと思う。 国家資格を受けた専門の技術者には叶わないが今はこれで良い。 生徒や職員、大切な恋人を守る事になるならな。 「うし、こんなもんか」 自分で散髪した髪は所々短くなっているが、セットをすれば気にならない程度だ。 襟足もサイドもすっきりした。 髪を掻き乱し髪に埋もれた切ったそれを払う。 「どうだ。 全体的に短けぇか?」 『それ位の長さも格好良いです』 「マジか」 三条はすぐに褒めてくれる。 貶す言葉は聴いた事がないが、顔を見ればそれが本音だと分かるから良いか。 ふわふわ笑う姿は高校在学中となんにも変わってはいない。 穏やかでおおらかで、笑うと少し幼く見える。 三条の笑い方だ。 鏡を見て切り残しを見付けては切っていく。 セットをすれば大丈夫、が長岡を大胆にした。 「終わり。 ありがとな。 助かったよ」 『お役に立てたなら良かったです。 それにしても、正宗さんって器用ですよね』 「そうか? 普通だろ」 『料理もそつなくこなしますし苦手な事ってないんですか?』 「三者面談」 当たり前だろ。 他に何があんだ。 『三者面談は……そうですね…』 「特に遥登の時はやばかった」 特に三条の時は緊張して腹が痛かった位だ。 あれは出来ればしたくない。 覚えのある三条も困った様な顔をした。

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