725 / 1502

第725話

『はーる。 その顔は流石にやべぇよ』 「その、顔…?」 『してる時みたいな顔してる。 もしかして、発情してくれた?』 「っ!!」 カメラが先程と同じ位置に戻ると、右口端の上がった綺麗な顔が映った。 「そ…それ、は……」 『体型維持頑張んねぇとな。 遥登に発情して貰えなくなったらショックだしよ』 そんな事を言うがジムに行ったりする様な人でない事は三条が1番よく理解している。 本に埋もれた部屋の一角は、どんどんその領地を拡げている。 だけど本当に筋トレをしているのも知っていた。 中年太りは嫌だ、ずっと遥登に好かれていたい、と。 後者の心配は要らないのに。 それに、発情の事だって。 漸くシャツに腕を通した長岡にホッとしつつも、下半身の昂りをなんとかしなくてはと次の事態に腰が引ける。 長岡から見えていなくても、勃起したソコをおおっぴらにしていられる程の精神的余裕もない。 それに、此処は自宅だ。 家族がいる。 静めない限り部屋からは出られない。 無意識の内に脚を抱え股間を隠した。 意味がないと頭は解っているが身体が動く。 『まだ明るいからな。 夜、少しだけ付き合ってくれるか?』 こくん、と頭を下げるとふと笑った気配がした。 イヤホン越しなのに耳が擽ったい。 この空気を纏う恋人の甘さを思いだし、より脚を腹にくっ付けた。 どうせ長岡は、自分が自宅で自己処理をしにくい事を理解している。 処理もままならず、しまいには腹を見ただけで勃起した事だって。 そんな自分に気を使い、付き合ってくれと言ってくれる優しい人。 負担になるのは避けたいけれど性的な事に関してはもう長岡ではないと満足出来ない身体になっているので今は有り難くそれに甘える。

ともだちにシェアしよう!