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第751話

「でも、やっぱり正宗さんって呼ぶのが1番好きです」 『じゃあ、呼んでくれるか?』 「正宗さん」 『うん。 俺も遥登に名前で呼ばれんの好きだ』 長岡が先生だったから出会えた。 先生に目を奪われ、惹かれたのも事実。 だけど、やっぱり1番は“正宗さん”と名前で呼ぶ事だ。 長岡を長岡だと形容する言葉。 そして、世界で1番愛おしい言葉。 その名前は何度口にしても、しあわせになれる。 『遥登』 「はい?」 『呼んだだけ。 呼ぶのも良いよな。 学校では、三条としか呼べなかったろ。 遥登って呼ぶ方がしっくりくるのにな』 長岡に名前を呼ばれると、この名前がとても特別なものの様に思える。 両親が沢山の願いを込めてつけてくれた名前は、恋人の愛に包まれ豊かになっていく。 「前に俺の名前、雄大でよく似合ってるって言ってくれたじゃないですか。 あの日から、この名前がもっと好きになったんです。 正宗さんのお陰ですね」 『大袈裟だな。 ご両親のセンスが良いんだろ。 こんな穏やかな子に遥登だぞ。 めちゃくちゃ合ってるじゃねぇか』 「俺の名前が太郎とかだったらどうですか?」 『今更、遥登以外の名前はピンとこねぇけど、太郎か…太郎……』 綺麗に整えられた眉が寄せられ眉間に皺が寄る。 授業中でも準備室へ質問をしに行った時でも見られなかった顔を三条はマジマジと眺めた。 これはかなりレアな表情だ。 目に焼き付けておかなければ勿体ないと、じっと見詰める。 「ガチの悩み方ですね」 『太郎より遥登だ。 遥登以外は考えらんねぇ』 今更他の名前も考えにくいのは三条本人も同じだ。 長岡に呼ばれる度に大切になっていく、この名前が良い。

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