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第768話
広い駐車場の隅に車を停車させると水筒から麦茶を飲みながらスマホを弄る。
綾登の予防注射に自動車の運転を頼まれたまでは良かったのだが、一緒にいるのになんで兄は来ないのかとクズりだし今にも泣きそうな弟と別れたのはほんの少し前。
建物の前まで付き添い、かくれんぼしようか!となんとか戻ってこれた。
終わったら母親が連絡をくれるので探していた体でいなければ。
騙している様で気も引けるが、あまり多くの人が出入りするのはリスクになってしまう。
相手の多くは乳幼児とその保護者だ。
リスクは低いに越した事はない。
それにしても予防注射って沢山あるんだな
あんなやわらかい皮膚に針射すのも緊張しそ…
そういえばハンコ注射…俺、痕あるか?
上着のパーカーを脱ぎ、半袖の袖から覗くガリガリの腕をみるがそれっぽい痕は見当たらない。
ねぇな…?
ないなんて事はないと思うと皮膚を捻って覗き混むが、正直よく分からない。
ただ、沢山の予防を受けたお陰か 細身以外は健康体。
注射がこわくて泣いてしまう子供もいるが、愛情でもあると今なら理解出来る。
子供が辛い思いをするのは親にとっても辛い。
それを少しでも抑制する事が出来るなら、泣かれてでも予防接種を受けさせるんだろう。
綾登を通して見る事の出来る世界は今までの自分の目線とは違って多くの愛に満ちている。
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