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第776話
「さっきから食べ物の話ばっかりしてますね…」
「良いじゃねぇか。
楽しいよ。
ここ、ラーメンも有名だろ。
それ位しか知らなかったから他の食い物の事も知れて面白れぇよ」
そうだ。
遥登らしくて肩から力が抜ける。
こんな時間をずっと願っていた。
3月の頭からリスクを考え会わない事を決め早2ヶ月以上。
ずっと上手く息が出来ず、身体に力が入っていた。
それが、9歳年下の─今は8歳年下の恋人に会えただけですべてが正常に機能している。
血液は酸素を喜び、目はずっと隣を見、口元は緩む。
心臓はさっきから愛おしい愛おしいと嬉しそうに動いていた。
全身で三条に会えた喜びに浸りしあわせを噛み締める。
それがどれだけ贅沢な事なのか嫌と言う程思い知った。
「ほかにも美味しいのありますよ。
さっき通ってきたケーキ屋のおこわとか。
そうだ通っていた中学の近くに大きいクレープの店もあるんですよ。
大きくて美味しいです」
「中学」
「?」
「いや、遥登が通ってた中学って興味あるなと思って」
「普通の中学ですよ」
「遥登が通ってたから興味あんだよ。
中学ん時も可愛かったんだろうな」
「男だから格好良いの方が嬉しいんです…」
入学式の顔は今でもよく覚えている。
幼くて今より小さくて、ブカブカの制服を着ていた。
ガリガリなのは変わらないが、在学中にすごく格好良くなった。
なんせ1番近くで見てきたからな。
自信をもって言える。
頼れる恋人だ。
それも自慢のな。
「高校生入学してからは格好良い成長になったんだろ。
よーく知ってる」
だけど、ふにゃっと笑う顔はあの時と殆んど変わっていない。
あどけなく愛おしい。
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