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第778話
自宅に帰ってきて、その足で浴室へと向かった。
我慢ばかりの思春期と楽しい事を沢山教えてあげたい幼児のいる家の事を気にしていた長岡と帰ったらすぐに風呂に入ると約束したので、きちんと守らなければ。
なんだか長岡のにおいが消えてしまいそうで寂しいけど、こればかりは文句は言えない。
みんなが足並みを揃えなければ、医療従事者の方々が逼迫してしまう。
子供達の楽しい時間が奪われていく。
大人達の大切な時間が孤独になってしまう。
ニュースでは、すでに差別もあると聞く。
そんなのは絶対に駄目だ。
次男の修学旅行だってどうなるか分からない。
本当に我慢ばかりの年になりそうだ。
「でも、会えて嬉しかった」
会えて嬉しかった。
本当に嬉しかった。
1人溢した言葉はすぐに浴室に消えたが、胸をあたたかくしてくれるこの気持ちは消えやしない。
ふにゃぁっと頬を緩め、湯に浸かる。
会っている間に湯温は少し冷めてしまったが追い焚きをすれば大丈夫だろう。
ぬるめの湯で長くはいるのもたまには良い。
風邪なんてひいたら長岡はまた気にしてしまうのでそれだけは気を付けなければ。
抱き締められたのも夢じゃない
沢山名前呼んで貰えたし、俺も呼べた
すっげぇ嬉しい
髪から滴を垂らしていた三条は湯船に沈み言葉通り頭まであたたまった。
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