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第781話

綾登のボール遊びに付き合う兄は今日もにこにこしている。 兄弟揃ってだけど口角がきゅって上がってるからそう見えるだけって時もあるが、あれは笑っている顔だ。 強火坦が言うんだから間違いない。 「こっちな。 ぽんってしてみ。 うん。 上手」 「へへぇ」 「次、俺な。 いくぞー」 「きゃぁ!」 楽しそうな兄と弟の声を聞きながら目の前の数字を解いていく。 この家だけ見ていれば、とても穏やかな日々だ。 ほんの少し買い物時間が変わって、ほんの少し生活リズムが変わった。 それ位の印象しかない。 たけど、それは両親や兄が笑って守ってくれているからだと知っている。 きちんと理解している。 例え、それを口に出せなくとも。 そこまで子供じゃない。 突然部屋が静かになり、問題を解いていた頭を止める。 「んー…」 「腹減ったのか?」 「んま…」 「俺も減った。 甘いの食いたいなぁ」 「んー」 やけに声が近くから聞こえてくるな ソファの陰からこっそり此方を見ていた2人に次男もふにゃっと笑うしかない。 「宿題終わったらなんか作る」 「やった!」 「たっ!」 「ほうれん草はまだな」 「ぶー」 兄はこうして自分を気遣ってくれる。 その優しさはとても深くてあたたかい。 だから、俺も同じ物を弟に兄に、そして両親に分けられる様になる。 願望ではなく、なるんだ。 パントリーの掃除をしていた母親は楽しそうな声を聞き、兄弟がよく似た顔で笑っていた。 今日も家が元気な声で満ちていて良かったと。

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