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第784話

トボトボと歩く帰り道、優登は空を見上げて口を開けた。 「じめじめする…」 「雨降んならちゃんと降って欲しいよな」 「わかる。 ほんと、それ」 6月になって蒸す日が増えた。 マスクをしているので余計に不快だ。 とは言え、マスクをしなければこわいのも本当なのでこれに関しては致し方ない。 衣替えしワイシャツ姿になった分だけ涼しいが、何せシャツが肌に貼り付く。 このなんとも言えない感じは好きになれない。 「でも、学校には行きてぇな」 でも、友達と会えるのは嬉しい。 めんどくさい筈の学校がこんなに恋しくなるなんてな。 規則は増えた。 学校で集団感染が発生したら大変なのは生徒達だって理解している。 たが、ホルモンバランスの不安定な中学生にはそれが腹が立つ。 “いつもは我慢してるんです”と前置きをしてから“だから今日は飲むんです”なんて言い訳をする大人がムカつく。 我慢してるのは大人だけじゃない。 子供も、それこそ綾登の様な幼児だってしているんだ。 公園で遊べば文句。 マスクが出来ない子供達を持つ親の気持ちが解るのか。 つい大人の癖にと悪態をついてしまう。 分かってる。 だから、子供なんだ。 「テストさ難しいっぽいよ」 「なんで? 今回範囲短いだろ」 「去年のも範囲になんだって。 俺、去年のところ苦手なんだよ」 「あー、あー…」 水溜まりを避けて歩きながら友達と過ごす時間の尊さを悪れた大人達にも思い出して欲しい。 懐かしいにおいも、友達の声も、夕日の眩しさも。 すべて大切な今なんだと。

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