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第788話

お洒落…はよく分からないが、体型を隠してくれるサイズの半袖シャツにいつもの細みのボトムスを穿き、腕時計をはめた。 必要な肉さえない貧相な身体なのでその細さを隠してくれる服を好んでいる。 キャップもと思ったが、大分日が陰ってきたし必要なさそうだ。 確認した腕時計は腕が心地好いのだと嬉しそうに見える。 これも弟のお陰だ。 久し振りだな やっぱり腕が居心地良いよな そっと縁に触れなぞると、向かいの部屋から弟が顔を出してきた。 「兄ちゃん、お酒落した?」 「したした」 「時計も?」 「ん、ほら」 腕時計を見て優登は嬉しそうに頷いた。 そして、似合うな!と笑う。 「いつもと変わんねぇけど良いか」 マスクをしたら早く行こうと急かす声に部屋を出る。 そして優登はアイス!アイス!と言いながら大きな背中を押した。 思春期真っ盛りの筈なのに無邪気で兄の顔も綻ぶ。 「階段は押すなよ」 「押さねぇよ。 兄ちゃん折れたら大変だろ」 「折れたら大変なのは俺じゃなくて骨な」 玄関へと向かうその途中で台所にいる母へと声をかけた。 「散歩してくる」 「優登から聞いてるよ。 気を付けて行っておいでね」 相変わらず兄の事に関しては用意周到だ。 母は、台所から出てくるとそっと千円札を2枚握らせた。 お土産よろしくね、と。 皆が気にかけてくれ、大きな愛情に包まれているのが嬉しくてほんの少し恥ずかしい。 だけど、やっぱり嬉しい気持ちの方が大きい。 ひとつ頷き行ってきますと玄関を出た。

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