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第789話
「それでブラウニー作ろうと思うんだけど、のっけるならバナナとナッツとどっちが良い?」
「今の気分はバナナが良いかな。
あのちょっとやわらかめの奴でバナナのっかってたら美味いと思う。
あ、しっかりめのならオレンジピールのも美味かった。
どっしり濃厚なのにオレンジが爽やかでいくらでも食える」
人気の少ない道路を兄弟でゆっくりと歩く。
あちこちの家から晩飯のにおいがして、楽しそうな声が微かに聞こえてくる。
こんな時だから家族が揃って食事が出来る家もあるのだろう。
そして、その逆も然り。
こんな時でも世の中は不公平だ。
「チョコとオレンジって合うよなぁ。
チョコも食いたい」
食欲旺盛な次男はにこにこと次に作るお菓子の話をしていた。
お菓子作りに魅了された次男の部屋には兄の部屋同様、沢山の本が棚に揃えられている。
お菓子や料理の本も多い。
図書館や学校の図書室で借りた本から抜擢した物や、ネットで調べた物もファイリングされている。
そのどれもが甘さを抑え兄の好みに書き換えられているのが次男らしいところだ。
「ね、いま何時」
「19時18分」
「そっか」
三条が時計を確認しつつ時計盤を見せると、にっと頷いた。
優しい気持ちは遺伝する。
優登の気持ちはしっかりと三条に伝わり心をあたためてくれていた。
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