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第795話
『あの、正宗さんのご両親も美形なんですか…?』
「美形って…普通だよ。
俺も普通だろ」
『普通じゃないですよ。
すごく綺麗です。
俺、いつも言ってますよね。
その顔だけで生活出来ますよ』
麦茶で酔っているとは思えない。
いや、そもそも一緒に飲んでいる印象では三条は弱くない。
なら、これは素か。
やっぱり誑してんな
こんなん言われて嬉しくねぇ女の子はいねぇだろ
「柏と蓬の方が美形だろ」
『蓬ちゃん達も可愛いですけど、正宗さんの顔すごく好きです。
ご両親も綺麗なんだろうなってずっと思ってて、無粋な好奇心ですけど興味があるんです』
「興味か。
俺は自分にも両親にも興味ねぇからな…」
両親の事を思い浮かべても、老けたなとそっちが先行してしまう。
本当に本の事以外興味が薄い。
「遥登が俺の家族の事聴くのはじめてだよな」
『興味は、ありますよ。
でも、興味で聴くのってなんな下品と言いますか行儀が悪いじゃないですか』
「そんな事ねぇよ。
寧ろこっちは家庭調査表で各ご家庭の事見させて貰ってんのに」
『それは…先生ですから』
担任を受け持っている時に、自宅から家族構成と色々と目を通させて貰った。
学校内で粉砕する程の個人情報だ。
そんな物を担任というだけで見、その記憶力からある程度の自宅範囲まで覚えてしまっている。
それに関しては生徒や保護者会わない様に買い物をする時に便利なのだが、なるべく忘れるように努めていた。
くいっと甘いそれを煽りながら、同じ様にマグカップを傾ける三条を暫し見る。
「何が知りてぇ?」
その言葉に三条は好奇心に満ちた目を寄越した。
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