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第796話
「俺が見たいのか?
親じゃなくてか」
『はい。
先生になる前の頃が見てみたいです』
「多分クラウドにある筈だから…ちょっとだけな」
以前使っていたスマホのデータはクラウドに保存してある。
探せば学生時代の物もある筈だ。
梅酒を飲み込みながら日付を遡っていく。
チラチラと肌色の多いものがあるが、それはおかず用だ。
有り難く活用させて貰っている。
これで抜くと気持ちいんだよな
また遥登にも送ってやろ
ぐんっと時を遡り、学生時代。
まだ7年前まで学生だったのに、もう遠い昔の様にも感じる。
流行も流行りの言葉も今とは違う。
青い春は、懐かしいと言うにはあまりに身近にあり過ぎて時々錯覚していた。
三条は生徒。
自分は教員。
1歩後ろから眺めるキラキラとした青春の眩しさに自分もそれを味わっている様だった。
そうこうしている間にスーツ姿の自分の写真を見付け、遠慮なしにスワイプしていた手をゆっくりにする。
今の三条と殆んど変わらない20歳の時の自分。
自分で言うのもなんだが、若い。
自由に今より明るい髪色に出来たのも楽しかった。
だが、三条と出会ってからの方がもっと楽しい。
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