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第801話

「正宗さんって、この頃から先生になろうって決めてたんですか?」 『あー…、いや、正直な院に進もうか迷ってた。 当時はもっと勉強してぇって思っててな。 つっても、いつまでも学生じゃいられねぇしそのまま運良く…なんて思いはあったけど、まさか高校の教員になれるとは思ってなかった』 出会えた事は本当に奇跡だったんだ。 元々文系とは言え長岡から古典のロマンの教えて貰わなければ今在籍している大学に進学したかは分からない。 もし今の大学へ進学し、長岡も院へいきその先へ進んでいたとしても、それこそ大学で擦れ違う事すらなかった可用性だってある。 それが、長岡の日常と三条の日常とが僅かに重なった。 あの高校で。 あのクラスで。 あの日、あの瞬間に。 『たまたまと俺のやる気と気力が重なっただけ』 「じゃあ、俺は運が良いですね。 先生のクラスになれた事も」 交差した日常は運命だったのかはたまた偶然だったのか、そんなものは今となってはどっちでも構わない。 だって、今隣にいる。 そちらの方がとても意味がある。 『そうだな。 俺も運が良いや。 可愛い教え子に恵まれた。 それに、恋人にも』 長岡と、友人達と過ごした3年間は濃かった。 本当に色んな事があった。 強姦され脅迫されどうやって逃げようかばかり考えた日々があって、秘密の関係を保ちながらドキドキした毎日を過ごし、沢山笑った。 それに、なんて言ったって古典のロマンを教えて貰った。 美しく慎ましやかで誇らしいロマンス。 長岡と出会わなければそんな“今”は在りはしない。 恋人の体温を知らない人生なんて、もう考えられない。 知らずに日々を過ごす事がなくて良かった。

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