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第800話

『気に入ってくれると良いな』 首を傾げセットされていない前髪がさらさらと目元にかかった。 ほぼ同時に手にしたスマホが通知を知らせる。 差出人は目の前の恋人。 「…届きました。 ありがとうございます」 『どういたしまして。 また後で際どいの送るな』 「……はい」 自分から強請ったくせに、やっぱり照れてしまう。 だけど、開いた画面に写る恋人の写真はあの香水のにおいがしそうな程生々しくリアルだ。 際どいのってどんなのだろ… これはファイルにしまっとこ ……今日は、見るだけ スマホの奥に隠したファイルにしまう為に視線を落としていると、同じ様にスマホを弄っていた長岡が声をかけてきた。 『こんなんしかねぇな。 遥登』 「はい?」 『ほら、これが母親』 画面に差し出されたスマホには、柏を抱いた女性がいる。 長岡に似ていてパーツの1つひとつが整っていて配置も綺麗 。 自らの母親とは違うすっきりした綺麗さと言えば良いのだろうか。 だけど、どこか恋人の面影がある。 いや、長岡が子供なのだから、恋人に母親の面影があるのか。 正宗さんのお母さん…すごい綺麗 それに似てる パーツが整ってて配置も綺麗なのは血筋なのか 遺伝子すごい 『親となんて撮らねぇからな。 10年前のしかなかった』 「正宗さんのお母さんもすごく綺麗です。 正宗さんの遺伝子強いですね」 『遺伝子って…』 自分達兄弟も顔立ちは母親に似ているが、恋人とその母親も似ている。 長岡も子供なんだと当たり前の事をはじめて知る事が出来たようだ。 それに、今、気がついたのだが柏と母親が居るという事はそこは長岡が生まれ育った実家。 あの本ばかりの部屋とは違う、長岡が生きていた場所。 なんだか不思議だ。 一人暮らししてる正宗さんしか知らないから想像がしにくいな 子供だったなんて当たり前なのに どんな風に成長したんだろ 知りたい事ばっかりだ 照れるから終わりと下げされてしまったが目に焼き付いた美しい人は大切な人を産んでくれた感謝すべき人。 心の中で感謝した。

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