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第804話

スマホのシャッター音が楽しそうにほうれん草を収穫する弟達を切り取った。 「へへっ」 「おー、初収穫だな」 次男に手伝って貰いしっかり根っこから採れた赤根草は太陽の光をしっかりと浴び、その名の通り緑と赤が綺麗だ。 そのまま茹でておひたしでも食べたい。 真ん丸の目がじーっとそれを見てから室内の母にも見せびらかした。 「んまっ!」 「美味しそうだね。 早く蒸しパン食べたいね」 「んへへ」 「あー、土が付いた手を口に入れちゃ駄目だ。 しっかり洗わないとお腹痛くなって優登の作ってくれる蒸しパン食べられないぞ」 誕生日を迎え、それまでは濡らしたタオルで拭かれていたがご飯の前には手を洗う事を母は教えるようになった。 兄達が当たり前にしているのを見ているので特別嫌がったりする事もなく手洗いをしてくれているが、これからもっと多くの事が出来る様になってくるとイヤイヤ期がやってくる。 大怪獣は悪魔にもなるのだ。 楽しみだな。 「手洗いに行くぞ」 「うー」 収穫もそこそこに、両脇を抱き上げられいつもは入れない様にバリケードをされた台所のシンクへと運ばれていく。 「はい、到着。 手を洗います。 まずは、手を濡らして。 そう。 じゃあ、石鹸であわあわー」 「きゃぁ」 小さな手を包むように洗いながら、指で丸をつくりふぅっと息を吹き掛けシャボン玉を作った。 嬉しそうな声とぴょんひょんっと動く頭がしあわせを象徴している。

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