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第818話

遥登と過ごす時間はとても穏やかだ。 笑って、笑って、笑って。 世情がなんだ、世間がどうだ、そんな事を忘れただ楽しいと思うだけの時間。 世界中がしあわせだと錯覚するが、今は人よりウイスルの方が活動的だ。 だとしても、楽しいのは紛れもない事実。 「遥登と遊んでるとあっという間に時間が過ぎてくな」 『楽しいですか?』 「あぁ、すっげぇ楽しい。 この為に働いてんだからな」 『良かったです。 でも、大袈裟ですよ』 ふわふわと笑うその顔を見る為に今は部屋では会えないが、それでも一緒に過ごす手段は沢山ある。 こうして通話をしたり、ゲームをしたり、たまの贅沢に恋人の住む町に行きデートをする。 大袈裟ではなく、本当にこうして恋人と話をする為に働いているんだ。 目標や目的がなくなれば前に進むのがしんどくなる。 悔しい思いをして泣いた子供達だって沢山いる。 見てきた。 自分ばかり楽しくて良いのかと思う時もある。 けれど、自分ばかりではない。 この笑顔は嘘じゃないと知っているからだ。 「大袈裟じゃねぇよ。 自分を勝手に過小評価すんな。 俺の自慢の教え子だぞ。 俺の為にも自信を持て」 『…ふふっ。 はい』 『はい。 良い返事です』 この世が素晴らしいかは分からない。 だけど、少なくとも自分の人生は良いものだと思う。 この笑顔が隣に咲くんだ。 羨ましいだろ。

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