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第819話

手洗いされた黒猫のぬいぐるみが干される窓辺でお昼寝をはじめた三男の腹に綺麗に畳まれたバスタオルをかけ、その隣に腰をおろした。 SNSをぼーっと眺める。 田上や吉田、知佳ちゃん美知子ちゃん達が元気そうなのを見ると安心する。 みんな今年度は大学に行けていない。 焦りだってある。 だけど、高校時代と代わらずくだらない事を言っていたり、可愛い動物の写真を載せていたり、そういう当たり前だった事が続いているのが嬉しい。 壊されていない日常がこんなに愛おしくなる。 「兄ちゃん、麦茶ここ置いとくから飲めよ」 「ありがとう」 「お菓子も食べる?」 「至れり尽くせりだな。 優登も一緒に食おう」 末っ子を起こさないように静かに喜びパントリーからお菓子を持ってきた。 「かっちゃん達元気?」 「元気。 吉田はボランティア行きはじめて、田上はいつも通り。 オンライン授業だからギリギリまで寝てられてラッキーだって」 「元気なら良かった」 ふんっと両手で豪快に大袋の封を切り、日陰に置いた。 そそくさと手を伸ばした麦茶と共におやつ時を過ごす。 「それにしても、良いにおいするな」 「今日のはネットで調べたレモンケーキ。 食えるのは明日な」 「楽しみだな。 早く食いたい」 太陽はまだ頭上からこちらを見ていて冷房で温度管理のされた室内は天国。 涼しい部屋でお菓子を食べダラダラと過ごす。 これこそ夏休みの醍醐味の1つだ。 今期、大学には1歩も足を踏み入れてはいなくてもそれは変わらない。

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