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第820話
今日は待ちに待ったレモンケーキが食べられる日だ。
しっとりさせる為に1日は冷蔵庫に入れとく!と厳重にラップに包み更にそれをフリーザーバッグに入れ冷蔵庫で寝かせられたそれ。
見た目だけでもしっとりしているのが分かる。
思わず深く空気を吸い込んだ。
「おー、良い感じに出来てる」
「うまそ」
包丁で切っても欠片がこぼれない。
バターがまわり、全体が落ち着いた切り口から爽やかなにおいがふわりとした。
わくわくするにおいに口角は上がりっぱなしだ。
「味見する?」
「味見は作った人の特権だろ」
「律儀だなぁ。
じゃ、兄ちゃんは2枚な」
「ありがとう」
綾登の小さな胃腸にはまだ負担になってしまうレモンを使った焼き菓子。
焼いてあるが皮も使ったのでもう少しだけお預けだ。
そんな弟を前に食べる事はしたくないので、お昼寝をしているのを確認してからおやつに食べようと兄を呼んだのだった。
離乳食は完了期に入ってもう殆んどの物が食べられるが、それでも小さな身体の負担になる物は避けてあげたい。
苦しい思いをするのは綾登だ。
まだしっかりと自分の意思を言葉にして説明出来ないのだから尚更。
除け者にならない様に綾登の分の蒸しパンもあるが、最近の食欲はすごい。
何でも口にしてしまう程なので、お昼寝のタイミングを逃すのは勿体ない。
用意された皿にのせられる2切れに、また同じ台詞を吐いた。
「うまそ」
「美味かったら、また作る」
「絶対美味いだろ」
その言葉に優登は嬉しそうに笑った。
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