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第824話

足を跳ねさせ三男は嬉しい気持ちをアピールした。 隣に座る母親はおんなじ顔でスプーンを差し出す。 「うーん!」 「今日のは、うどんじゃないよ。 素麺」 今日は七夕だ。 雲の上の恋人は今頃逢瀬を楽しんでいる頃だろう。 今年に限っては羨ましいなと思いつつ、出掛ける事の出来ない三条はそんな思いを素麺と共に飲み込んだ。 そんな思いと一緒に食べても素麺は美味しい。 「綾登、あーん」 「あー」 大きな口を開けて短く切られた素麺を食べる弟もそうだ。 家族が元気で美味しい食事が出来る。 しあわせな事だ。 「兄ちゃん兄ちゃん。 このおいなりさんめっちゃ美味い」 弟達との食事は楽しいし美味しい。 こんなに気持ちが落ち着いているのは、食後に恋人とデートの約束があるからだ。 勿論ゲーム内でだが。 それでも、長岡と一緒に過ごせる時間は家族と過ごす時間と同じだけかけがえのないもの。 「本当だ。 美味い」 「な!」 「美月ちゃん、俺が食べさせるから食べて。 綾登、父さんでも良いよな」 「ちゃっ!」 「うわ…、1歳児と取り合いしてる…」 「取り合いじゃない。 俺の美月ちゃんだろ」 「あとは自分で食べられるよね」 「ん!」 「頭痛てぇ……」 今日も楽しいとただただ笑っていた。

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