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第828話

「今日のお昼は、なんと! トマトソースご飯です!」 「うへへっ」 「うし、綾登。 エプロン着けような」 にっこにこの顔で兄からエプロンを着けて貰っている末っ子は、なにか楽しそうに話している。 うんうんと相槌を打ちながら同じ顔をする長男。 一緒に食べるご飯が嬉しいと手を振って全身で伝えてくれる。 伸びてきた前髪を横に流しながら、さっとテーブルと手を拭いていると母親がご飯を持ってやってきた。 「あー!」 「これ好き?」 「んまー」 キーマカレーカレーやドライカレーからカレー粉を引いた様なそれを、トマト味と言うだけでトマトソースご飯と呼んでいる。 大体合っているし、綾登にはこの料理だと伝わるから良いか。 目の前に置かれたお皿を見て綾登が大きな口を開けて笑うと、みんなで手を合わせて昼食だ。 「みっちゃんのご飯美味しいなぁ」 「ん、まぁ…!」 「良かった。 沢山食べてね」 兄と母は、同じ物の味を濃くしカレー粉を足した物を食べている。 綾登はその違いが分かるのか兄の皿を指を指してから食べさせて欲しいと口元を指差しアピールしてきた。 漸く同じ物が食べられる様になってきたが、まだ辛いものは駄目だ。 「あれ? 綾登は上手にスプーン使えるんじゃなかったかなぁ。 格好良い所見たいなぁ」 くりくりした目が兄を捉え、母を捉えてから、小さなスプーンを動かした。 ご飯を掬って、反対の手で支えながら口に運ぶ。 「お、上手だな。 すごい!」 「まー、……へへぇ」 「もっかい格好良いところ見たいなぁ」 今度はトマトソースを掬うと、大きな口を開けて口の回りを赤くしながら口一杯に頬張る。 そして、とびきりの笑顔を見せてくれた。

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