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第833話

「心配させたんだから、アイスは兄ちゃんの奢りな」 「うん。 消毒してくれたからお礼にな」 本当に背中を押されながら外気温を伝えてくる玄関へとやって来た。 心配をかけてしまったお詫びにちょっと高いアイスにしよう。 行ってきますと声をかけるが、父と末っ子は入浴中だ。 行こうかと靴に足を入れると綾登のパジャマを用意しに寝室へと姿を消していた母親が廊下に顔を出してくれた。 「お土産よろしくね」 優登とよく似た顔で手を振ってくれる。 律儀だと思うが、そういう小さな事でもきちんと答えてくれるのは嬉しい。 分かったと短く返して家を出た。 扉を開けた途端に身体を舐める暑い空気に一気に汗が噴き出した。 リビングは末っ子に合わせた室温になっているのでとても快適で、その温度差に引き返したくなる。 当たり前だが外は夏で暑い。 今年は何処へ行くにもマスクが必要なので尚更だ。 とは言え、自分の健康を守る為だ。 しっかりと対策をして早く弟達が思う存分楽しい事を出来る様になるように出来る事はしなければ。 ……それと、傷口に汗が滲みて痛い気がする。 「兄ちゃんさ、もうちょっと自分に興味持ちなよ。 痛みも分からないとかやばいよ?」 「うーん…」 「今年度になって服買った?」 「あー…」 「本は?」 「沢山買った」 オンライン授業だと下はジャージのままでも良いし靴下も履かなくて良い。 それに時間が沢山あるので本やゲームが進んで仕方ない。 部屋には積ん読と言う名の自分好みの未読本もある。 魅力的だ。 なんだか誰かに似てしまった気もする。 「俺がやって心配してくれる事は自分もすんな」 ぽすっと脇腹を突かれ次男の気持ちを受け止めた。 相手の気持ちを考えられないならそれは動物と同じだ。 折角人間に生まれたのなら相手の気持ちを考え笑顔になるような事が出来たらしあわせだろう。 「分かった。 気を付ける」 「約束だからな」 「うん。 信じろ」

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