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第834話

コンビニから出ると弟は直ぐ様飲み物を取り出し手渡してきた。 「ありがとう」 「俺こそ高いのありがとう。 でも、帰るまでにアイス溶けそうだよなぁ」 「夕方になっても暑いよな」 マスクをズラし水分補給をする。 感染症も恐ろしいが、熱中症もこわい。 前例があるだけにそれまでより気を付けている。 堅いコンクリートがぐにゃぐにゃするあの気持ち悪さはもう2度とごめんだ。 上下する喉仏にさえ汗が伝い不快だが、食道を通る冷たい水分が気持ち良い。 「そういえば、今何時?」 腕時計をつける機会がなくなり誘ってくれた散歩。 すっかり恒例になり、度々こうして時間を聞いてくれる。 そんな小さな事が嬉しい。 「6時半」 「そっか」 よく考えてみれば、弟と2人で散歩なんて殆んどした事がなかった。 小さな頃は両親のどちらかが付いてきていたし、大きくなれば友達と遊ぶ事が楽しくなり散歩自体をあまりしなくなった。 だが、歩いてみれば夕餉のにおいや子供の声や風鈴の音、水撒きをしているご近所さんに色々な人を感じる事が出来る。 それに、大きくなった弟とこうして話せるのは中々楽しい。 「そうだ。 夏休みになったらかき氷作ろ。 あの、牛乳削るやつ」 「あぁ、あの美味そうなやつ!」 「マンゴーミキサーにかけて角切りにしたのものっけてさ」 「カルピスと桃のったのも美味かったな」 「ばあちゃんがくれた桃甘くて美味かったもんなぁ。 それもしよっ。 綾登も食べれるよな」 同じ家に住んでいても話は尽きない。 本当にアイスが溶けてしまわない様に帰路を急いだ。

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