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第835話

テストが出来ない。 その代わりに多くのレポートが出た。 三条はそれらを纏めながら、長岡と同じ時間を過ごしている。 「……」 画面の向こうも殆んど同じ状況だ。 授業で補えない物をなんとかして理解して貰おうと、プリントの製作をしていた。 応用をするより基礎をしっかりと覚えて欲しい。 基礎がしっかりと固まっていなければ応用がグラ付く。 根の真面目さが出ていたプリントはこうして作られている。 プリントさえ愛おしい。 くぁ…と噛み殺せなかった欠伸が恋人の耳に届いてしまったらしい。 『お、集中力切れたな』 「あ、すみません。 邪魔しちゃいましたか…?」 『いや、俺もちょっと休憩してぇなって思ってたところだ』 欠伸の気配が集中力を切ったかと思い眉を下げたが、長岡は笑う。 そして、つられてふにゃっと笑えば少し休憩だと伸びをした。 机に向かいっぱなしで縮こまった筋肉が伸びて気持ちが良い。 『コーヒー持ってくるからちょっと待っててくれ』 「はい」 炊事場へと消えていった恋人。 その恋人で見えなかったが、背後にあるソファの上にまで本が侵食しはじめた。 とはいえ、あの本は今作っているプリントの資料になるものか休憩時の本の筈だ。

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