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第839話

「空は青いな」 「ぶ」 日に焼けると赤くなる母と兄弟の為に張られた日焼け防止用のサンシェードが空を覆い隠しているが、空は青い。 青いから空なのだろうか。 空が青い理由なんてレイリー散乱で説明出来る。 けれど、空は空だから空なんだ。 そっちの方がわくわくするだろ。 水鉄砲でぴゅーっと上に水を撒けばすぐに自分へと返ってきた。 そして、綾登も巻き添えを食らっている。 「きゃぁぁ」 「楽しいな」 「遥登、西瓜も…一緒に入ったの?」 「うん。 暑かったから」 ビニールプールに尻を着いた長男に母親はじゃあバスタオルがもう1枚必要ねと笑った。 盆にのせられた西瓜とマグをプールの横に置かれた折り畳み式の小さな机に置き、今しがた履いたサンダルを脱ぎまた室内へと戻っていく。 「いただきます」 「麦茶も飲んでね。 綾登にも飲ませて」 「ありがとう」 「とー」 「ふふ。 どういたしまして」 一旦閉じられた窓から西瓜に視線を戻して、小さく切られたそれを三男に差し出した。 シャクッと瑞々しい音をさせながら頬張る姿を見ながら、三条も同じものを口に入れる。 甘くて冷たくて美味しい。 綾登も頬にペチペチと手を当てて美味しいと伝えてくれる。 これは優登もしていた記憶があった。 家だけなのかなと思っていたが、ベビーサインと言って仕草さえ違えど広く使われている物なのだと知ったのは大分大きくなってからだ。 これ、可愛いんだよなぁ 「綾登、おかわり。 プールに落とすなよ」 「あーい」 「良い返事だなぁ」 夏だ。 夏。

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